こちらの記事では、遮音等級曲線を用いた壁の遮音性能の測定方法と評価方法についてまとめています。
壁の遮音性能 測定・評価方法
壁の遮音性能の測定・評価では、大まかに以下のステップを踏みます。
- 音源スピーカー・測定点の配置
- オクターブバンドごとに測定
- 暗騒音矯正
- 室間平均音圧レベル差の計算
- 室間平均音圧レベル差を遮音等級曲線へプロット
- 遮音等級曲線から遮音等級の算出
- 遮音性能の評価
それでは、それぞれのステップを細かく解説していきます。
音源スピーカー・測定点の配置
音源スピーカーは、壁に直接音が入射しないように部屋の隅に配置します。測定点(マイクロホン)は音源室・受音室共に一様な分布となるように複数配置します。
オクターブバンドごとに測定
125[Hz]~4,000[Hz]まで6つのオクターブバンドについて測定します。測定した結果は、音源室と受音室での音圧レベル差を計算するために使用します。
暗騒音矯正
暗騒音がある場合は、それに応じて補正しなければなりません。
暗騒音とは
暗騒音とは、音源以外に発生している騒音のことです。現実的に暗騒音のない室は存在しないため、遮音性能の測定時などは暗騒音に応じた矯正値が必要です。
特定騒音がある時とない時の指示値の差 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10以上 |
矯正値 | -3 | -2 | -1 | 不要 |
室間平均音圧レベル差の計算
測定値をオクターブバンドごとに、室間平均音圧レベル差を計算をします。
D = L1 – L2
(D :質感平均音圧レベル差[dB]、L1 :音源室内平均音圧レベル[dB]、L2 :受音室内平均音圧レベル[dB])
遮音等級曲線にプロット
オクターブバンドごとの計算が完了したら、計算結果を遮音等級曲線にプロットします。遮音等級曲線とは、下のグラフのようなものです(下のグラフは、空気音での遮音等級曲線です)。
例えば、オクターブバンドごとの室間平均音圧レベル差が下の表のように得られたとします。
周波数[Hz] | 125 | 250 | 500 | 1,000 | 2,000 | 4,000 |
室間音圧レベル差[dB] | 37 | 38 | 54 | 51 | 56 | 60 |
上の表の結果を遮音等級曲線にプロットすると、下のグラフのようになります。
全ての点を曲線で結び(上のグラフの赤点曲線)その曲線をD等級曲線と呼び、その曲線をその壁の遮音等級とします。D等級曲線が上回っている基準線は、上のグラフでは赤線であり、「D-45」が得られます。
遮音性能の評価
最後にプロットして得られた結果から遮音性能を評価します。
建築物 | 室用途 | 部位 | 適用等級 | |||
特級 | 1級 | 2級 | 3級 | |||
集合住宅 | 居室 | 隣戸間界壁界床 | D-55 | D-50 | D-45 | D-40 |
ホテル | 客室 | 客室間界壁界床 | D-50 | D-45 | D-40 | D-35 |
学校 | 普通教室 | 室間仕切壁 | D-45 | D-40 | D-35 | D-30 |
戸建住宅 | プライバシーを要求される場合 | 自宅内間仕切壁 | D-45 | D-40 | D-35 | D-30 |
分類 | 状態 |
特級(特別) | 遮音性能上非常に優れている |
1級(標準) | 遮音性能上好ましい |
2級(許容) | 遮音性能上ほぼ満足しうる |
3級(最低限度) | 遮音性能上最低限度の状態である |
上で紹介した例では「D-45」であり、これが仮に戸建住宅だったとすると、その壁は遮音性能が特級であることになります。よって、「遮音性能上非常に優れている壁である」と言うことができます。
壁の遮音性能はこのように測定・評価します。
まとめ
こちらの記事では、壁の遮音性能を測定・評価する方法についてまとめました。壁の遮音性能を評価するまでの流れは、
- 音源スピーカー・測定点の配置
- オクターブバンドごとに測定
- 暗騒音矯正
- 室間平均音圧レベル差の計算
- 室間平均音圧レベル差を遮音等級曲線へプロット
- 遮音等級曲線から遮音等級の算出
- 遮音性能の評価
でした。実際に遮音性能を測定・評価する際は、是非こちらの記事をご活用ください。
今回の記事は以上になります。最後まで読んでいただき、ありがとうございました。