この記事ではトレーサーガス減衰法についてまとめています。
トレーサーガス減衰法は換気量を濃度測定の時間変化によって調べるときに用いられるものです。例えば部屋の中に二酸化炭素CO2を充満させ、充満が終わった後に開口を開放することで、二酸化炭素濃度は減少していきますが、その際にどれくらいの割合で空気が入れ換わったか(換気回数)をトレーサーガス減衰法で求めることができます。今回はそんなトレーサーガス減衰法について解説をしていきましょう。
トレーサーガス減衰法とは
記事冒頭でも少し紹介しましたが、トレーサーガス減衰法とは、濃度測定をすることによって換気量を測定する方法のことです。室容積はおおよそ測定されていますので、トレーサーガス減衰法を使えば換気回数N[回/h]も求めることができます。
実際に問題を解くかたちでトレーサーガス減衰法を紹介しましょう。
ガス減衰時の濃度は下の式で推測することができます。
増加時:pt – p0 = (p1 – p0)e^(-Q/V × t) + k/Q × {1 – e^(-Q/V × t)}
平衡状態時:pt – p0 = k / Q
減衰時:pt – p0 = (p1 – p0)e^(-Q/V × t)
(t:開口開始からの時間[h]、pt:時刻tでの室内のトレーサーガス濃度[ppm]、p0:外気のトレーサーガス濃度[ppm]、k:トレーサーガス発生量、Q:換気量[m³/回]、V:室容積[m³]、p1:初期のトレーサー濃度[ppm]、)
ガス濃度の算出式は、ガスが増加しているか、平衡状態にあるか、減衰(減少)しているかによって使う式が違います。トレーサーガス減衰法では、赤字の減衰時の式を用います。次からはトレーサーガス減衰法に使う式を導出しましょう。
トレーサーガス減衰法の公式の導出
時刻tでのガスの濃度の算出式は、下の式でした。
減衰(減少)時:pt – p0 = (p1 – p0)e^(-Q/V × t)
これでは換気量のQを求めるのが少々手間がかかってしまうので、Qを求めるための式に変形します。
上の式を変形して、
(pt – p0) / (p1 – p0) = e^(-Q/V × t)
両辺の常用対数(底が10の対数)をとって、
log10{(pt – p0) / (p1 – p0)} = log10{e^(-Q/V × t)}
左辺と右辺を入れ替えて、
log10{e^(-Q/V × t)} = log10{(pt – p0) / (p1 – p0)}
(-Q/V × t)log10e = log10{(pt – p0) / (p1 – p0)}
Q = 1/log10e × V/t × (-1) × log10{(pt – p0) / (p1 – p0)}
log10eはおよそ0.434ですので、この値を代入し、下線の(-1) × log10{(pt – p0) / (p1 – p0)}を計算すると、
Q = 2.303 × V/t × log10{(p1 – p0) / (pt – p0)}
こちらが導出されます。トレーサーガス減衰法では、この式を使ってガス減衰時の換気量を調べます。
トレーサーガス減衰法を用いた実際の問題は、下の関連記事にて問題と一緒に紹介しています。実際に紙とペンで手を動かしながら、どのように計算をしていくのかを体験してみてください。
まとめ
今回の記事では、主にトレーサーガス減衰方とはどんなものなのか、トレーサーガス減衰法で使う式の導出を紹介しました。実際に解説を読んでみても、問題を手を動かさないで理解することは難しいでしょう。関連記事にあるトレーサーガス減衰法を用いた演習問題を解いて、理解を深めていただければなと思います。
今回の記事は以上になります。最後まで読んでいただき、ありがとうございました。