この記事では自然換気の方法である、風力換気と温度差換気についてまとめています。
建築基準法では、室内の換気回数(1時間に空気が入れ換わる回数)が決められていますが、その換気方法はいくつか存在しています。この記事では換気方法の一つである自然換気の中の風力換気について紹介していきましょう。温度差換気については下の記事でまとめていますので、そちらをご覧ください。
風力換気とは?計算方法について
まずはじめに風力換気からです。
建物に風が当たると、通常では風上面(風が当たる面)には圧縮力が生じます。また、風下面(風が当たる面と逆側の面)には逆に引張力が生じます。これにより建物の風上面と風下面とに圧力差が生じ、風上面と風下面に開口があった場合は気流が発生します。これを換気に利用したものが風力換気です。
風力で生じる建物面の圧力差の公式
風力換気を設計する際に圧力差の計算をしますが、圧力差Δpwは下の式で計算をすることができます。
Δpw = 1/2 × ρov²(c1 – c2)
(Δpw:圧力差[Pa]、ρo:外気の密度[kg/m³]、v:風速[m/s]、c:風圧係数)
この公式の解説を少々紹介します。Δpwの”w”は風邪を意味する”wind”の頭文字です。また、外気の密度ρoの”0″は、外を意味する”outside”の頭文字から来ています。
風圧係数cとは?
風圧係数cですが、こちらは建物の形状によって決まる係数となります。こちらは風力換気の問題などでは問題文に決められていることが多いです。風圧係数はおおよそ”風上面(風が直接当たる面)>風下面(風が直接当たる面と逆の面)”となりますので、圧力差の計算時には、風圧係数の大小関係によって符号が変わることも合わせて覚えておきましょう。
風力で生じる建物面の圧力差の公式の導出
ここで、上の公式の導出を行います。
建物にかかる風圧は、下の式で与えられます。
pw = 1/2 × ρovc
例えば、下の図のような場合を考えましょう。
上の図ように風が発生していた場合、建物左面に生じる風圧は、下のように計算することができます。
pw左 = 1/2 × ρovc1
同様に、建物右面に生じる風圧は、
pw右 = 1/2 × ρovc2
となります。圧力差はこれらの差を取れば良いので、
Δpw = pw左 – pw右 = (1/2 × ρovc1) – (1/2 × ρovc2) = 1/2 × ρov²(c1 – c2)
というように公式が導出されます。上の式では、風が左から右に流れることを想定しました。この場合、風圧係数がc1>c2となりますので、Δpwの符号がプラスになります。もし計算をしたのちΔpwの符号がマイナスとなった場合は、風の流れる向きを逆と捉えていることがわかります。風の向きと圧力差の符号の関係もしっかり理解するようにしましょう。
風力換気と換気量の関係
次に風力換気でどれくらいの換気量を得られるのかについて紹介します。換気量とは単位時間(1時間)にどれだけの空気体積[m³]が入れ替わるかです。計算式は以下のようになります。
Qw = αA√(c1 – c2) × v × 60²
(Qw:換気量[m³/h]、αA:実行面積[m²]、c:風圧係数、v:風速[m/s])
相当開口面積とは?
開口の形によって決まるものです。開口の面積Aに対して、その面積が換気にどれだけ有効な面積であるかを係数化して掛けたものが相当開口面積αAです。下の図をご覧ください。
αの値は、実際の問題では与えられているが多いですが、おおよそ0.6~0.7の範囲内にあることを覚えておきましょう。相当開口面積は換気時に開口が一つの時に用います。
総合実行面積とは?
上のように開口が複数ある場合は、αAを総合実行面積を計算します。上の図のような開口条件の場合、
αA = 1/√{(1/α1A1)² + (1/α2A2)²}
となります。
上のような開口条件の場合の総合実行面積は、以下のようになります。
αA = α1A1 + α2A2
となります。
換気量の公式は、
Qw = αA√(c1 – c2) × v × 60²
でしたが、式の最後にある60²は換気量Qwの単位を[m³/h]の一時間当たりに変換するためにかけているものです。もしこれがない、すなわち
Qw = αA√(c1 – c2) × v
の場合は、換気量Qwの単位は[m³/s]となります。
換気量がわかると、Qwを室容積Vで割ることで、換気回数Nを求めることができます。『換気量Q=室容積V×換気回数N』の関係も合わせて覚えておくと良いでしょう。
まとめ
今回は風力換気の設計に使う式や概念、風力換気による換気量の計算式について紹介しました。
風力換気の設計に使う建物面の圧力差Δpwの公式と換気量の計算式は、
- Δpw = 1/2 × ρov²(c1 – c2)
- Qw = αA√(c1 – c2) × v × 60²
でした。これらはセットで覚えておくと良いでしょう。何度か記事を読み返して、理解を深めてくださいね。
今回の記事は以上になります。最後まで読んでいただき、ありがとうございました。