この記事では光束という概念と視感度曲線(光の波長と視感度の関係)について説明をしていきます。

光束は人間の認識に基づいて定義されています。その光束がどのように数式化されているかを確認していきましょう。光は人間の体で認識されるものですので、光がどのようなものかを想像しながら記事を読んでいただけると、一層理解が深まります。

それでは内容にはいっていきましょう。

 

人間の可視域と光の波長について

光束の説明をするには、まず人間の可視域(光を認識する波長の範囲)について知らなければなりません。

光は波です。光の波長によって人間は異なった色であると認識します。下の図をご覧ください。

image

上の図は光の波長と視感度(光を人間がどれだけ認識するか)の関係を表した曲線です。青点線は暗所視(暗い所での視感度)曲線赤線は明所視(明るい所での視感度)曲線です。例えば暗所視で光の波長がおよそ500[nm]のとき、視感度はおよそ1をとります。視感度が1ということは、100パーセント光を感じ取るということですので、見やすい色の光であるということになります。

人間は波長ごとに感じる色が異なるということはおそらくみなさんも知っていることでしょう。上のグラデーション図にもあるように、光の波長が380[nm]のとき人間は光を”紫”と感じとり、700[nm]の時は”赤”と感じ取ります。波長が380[nm]よりも小さい時、人間は色を感じとれず(目では見えない)、その波長域(波長)を紫外域(紫外線)と呼びます。「紫の外側にあるので紫外域」と覚えると理解も早まるでしょう。逆側の赤色の外側(波長が780[nm]よりも大きい)の時、その範囲を赤外域と呼び、その波長を赤外線と呼びます。

紫外線はよく肌のシミや日焼けなどの原因となると言われるものです。赤外線は赤外線センサーであったり、通信機器の通信波長に使われるものです。これらは人間の目では感知しきれない波長の光ですので、目には見えません。

 

光束とは?光束の概念について

光と波長、人間の視感度についての解説が終わったところで、光束という概念について説明していきましょう。

光束とは、ある受光面に流れる放射束(光の量、単位[W]) のそれぞれの波長ごとに、上の図で示したような視感度をかけて積分したものです。定義を数式で表すと下のようになります。

光束Fの定義

F = Km(380→780)Φ(λ)V(λ)dλ

(F:光束[lm]、Km:最大視感度効率=683[lm/W]、λ:波長[nm]、Φ(λ):分光放射束[W/nm]、V(λ):標準分光視感度効率[-])

光束の単位の[lm]は”ルーメン”と読みます。

Φ(分光放射束)とは、単位時間当たりに受け取られる放射エネルギーのことです。光は波長であり、エネルギーです。

光束は、人間が光をどれだけ捉えるか(視感度)を用いた物理量であるため、完全に人間のための概念です。光のような人間の身体と結びついた物理量は、「心理物理量」とも言います。物理量よりも普遍性にかける(人間にしか適用されない)ものですが、このように人間用の物理量を定義するときに設計の手助けとなります。

実際の環境工学の問題では、これらをいちいち計算して光束を求めると手間がかかってしまいますので、光束量は問題で与えられていることが多いです。しかしその光束がどのような概念で算出されるかを理解しておくことは非常に重要ですので、是非公式だけは覚えるようにしましょう。

 

まとめ

今回は人間が光をどれだけ捉えるかを表す視感度曲線と、光束という概念、公式を紹介しました。光は私たちの周りにありふれたものであり、それらが数式で表されるのが面白く感じる人も多いのではないでしょうか。

光環境の設計では、光束や照度の計算などが必要になります。関連記事に光環境の計算で必要となる照度や昼光率などの記事を紹介していますので、是非ご覧になってください。

今回の記事は以上になります。最後まで読んでいただき、ありがとうございました。